ビジネスをデザインでひらく 公益財団法人大阪産業局・デザイン活用支援 oidc(Osaka Innovative Design Connect)
老舗線香メーカーによるライセンスビジネスへの挑戦
デザイン相談「D-challenge」活用事例:株式会社芳薫堂
老舗線香メーカーによる
ライセンスビジネスへの挑戦
デザイン相談「D-challenge」活用事例
株式会社芳薫堂の取り組む
創業130年を迎える線香メーカー「株式会社芳薫堂」が、ライセンス契約による新製品開発に挑戦しました。
大阪産業局の支援をきっかけに、人気アニメ『ダンダダン』をモチーフとしたお香を製品化した事例をご紹介します。
同社の中川社長に、その経緯や開発の裏側についてお話を伺いました。
【事例・インタビュー】
── 大阪産業局のデザイン活用支援を利用されたきっかけをお教えください。
中川社長:
線香業界は市場が縮小傾向にあり、今後の経営に危機感を持っていました。経営コンサルタントに相談したところ、大阪産業局の中にデザインに関する専門的な支援窓口があることを紹介され、訪問したのがきっかけです。
── 当初はどのような相談をされましたか。
中川社長:
最初はパッケージデザインの刷新について相談しました。しかし、対応していただいた専門家の小山さんより「単なるデザイン変更ではなく、商品開発の視点から考えるべき」という助言を受け、より包括的なマーケティングの話へと発展しました。その対話の中で、私が以前から関心を寄せていた「ライセンスビジネス」の可能性についてもアドバイスをいただきました。
── ライセンスビジネスへの参入を決意された理由は?
中川社長:
大手の競合他社がアニメキャラクターとコラボレーションしたお線香を販売しており、以前から興味は持っていました。しかし、何から着手すべきか全く知見がありませんでした。今回、具体的な成功事例を紹介され、可能性を感じ「やるしかない」と決意が固まりました。
── ビジネス化にあたり、困難だった点はありますか。
中川社長:
その後、専門家の川本さんの指導のもとアクションを開始しましたが、人気アニメ「ダンダダン」の版権を持つ相手先が集英社という大手企業であること、そして私たちがライセンス契約に関して素人であったことから、対応には苦労しました。デザイン用語の理解や契約の作法など、私たちだけでは対応しきれない場面もありましたが、大阪産業局の皆さんの手厚いサポートにより進めることができました。
── 製品である「ダンダダンのお香」には、珍しい材料が使われているそうですね。
中川社長:
はい。川本さんから「製品に独自のこだわりを持たせるべき」という指摘を受け、「ミロバラン」という神秘的で入手の難しい素材の配合に挑戦しました。ミロバランはそのまま燃焼させても香りが立たないため、香りのレシピを創意工夫し、試行錯誤を重ねました。その結果、各方面から香りに対して高い評価をいただける製品となりました。
── ライセンスビジネス特有の制約については、いかがでしたか。
中川社長:
やはり版権元であるキャラクター管理側の戦略や意向が最優先されるため、こちらの自由にならない部分は多くありました。特に印刷する絵柄については細かく厳しいチェックが入ります。現在も難しい調整が必要な案件については、大阪産業局に相談に乗っていただいています。
── デザイン活用支援を利用した感想をお聞かせください。
中川社長:
中小企業にとって、専門的な知見を相談できる場があることは非常に心強いと感じました。以前は「自社には手が届かない」と諦めていた有名キャラクターのライセンス商品が、こうして形になりました。何より、これほど専門性の高いサポートが「無料」で受けられる点は、経営者として本当に助かりました。
インタビュアー:大阪産業局デザイン活用支援oidc 小山啓一
【プロジェクトの背景と展望】
斜陽産業からの脱却と新たな挑戦
株式会社芳薫堂の中川社長が大阪産業局を訪れたのは、2025年の春でした。年々需要が減少する線香・蝋燭業界において、現状への危機感と「インパクトのある新商品で、新たなビジネススキームを自社の資産にしたい」という強い思いを抱えていました。いくつかの施策を検討する中の一手として挙がったのが、人気キャラクターによるライセンスビジネスでした。
専門家による伴走支援
マーケティングについて大阪産業局の専門家から多角的なアドバイスを受ける中で、中川社長の挑戦意欲に着火したのは「ライセンスビジネス」という選択肢でした。
しかし、一般的に大手ライセンサー(版権元)は、契約を結ぶ企業をクリエイティブ能力やビジネス遂行能力を見て厳選します。中小企業が単独で門を叩いても、回答を得ることすら難しく、話にならにケースも少なくありません。
そこで同社は、デザインとビジネス慣習に精通した「大阪産業局のデザイン活用支援」を活用することで信頼を得、交渉を前進させることに成功しました。
タイミングの重要性と今後の課題
数々の障壁を乗り越え「ダンダダン」のお香の発売に至りましたが、課題も残りました。商品開発の遅れにより、2025年のアニメ「ダンダダン」の第二期テレビ放送に発売が間に合わず、さらに第三期の放送が2027年へ延期されるなど、外部要因の影響を大きく受けることとなりました。
中川社長は、今回の経験を通じライセンスビジネスにおける「リリースタイミングの重要性」を痛感しており、この経験を次なる展開への教訓としています。
新たな需要の開拓
この挑戦を見た企業や学校から「うちのオリジナルのお香を作りたい」といった問い合わせが複数あり、オリジナルOEM商品の開発という新たな分野での活路を見出しています。また、今まで付き合いの無かったバイヤーとの関係ができるなど、挑戦の成果は多岐にわたるようです。