ビジネスをデザインでひらく 公益財団法人大阪産業局・デザイン活用支援 oidc(Osaka Innovative Design Connect)
2023デザイン・オープン・カレッジ フォーラム「サービスデザイン思考でモノづくり企業の未来を変える!」開催報告
2023年10月25日、大阪産業創造館4階のホールにて開催された、株式会社インフォバーン取締役副社長/デザインストラテジスト 井登友一氏による講演は、受講者満足度95.6%(大変満足+満足)と大変高い評価をいただきました。
冒頭、井登氏から「今日は顧客にとっての価値の話をします」と説明がありました。
顧客価値とは、一般的に思い浮かべるユーザーの利便性や快適性だけではありません。
「企業は価値を提案することしかできず、最終的に価値は顧客の元で完成される」というサービスの本質を示し(専門用語では「サービスドミナントロジック」といいます)、併せて(製品やサービスの)価値は、顧客を取り巻くコンテクスト(文脈)によっても変化すること(コンテクストとは、社会性や時代性によって変化する人々の価値観のこと)を指摘されました。
例えば、リーマンショックやコロナ禍を経験した人々の価値観は大きく変化したと考えなければならないでしょう。
製品やサービスが持つ「意味を提案する」ために必要なことは、“ユーザーが存在する世界全体をよく見ること”とまとめられました。
講演の中で井登氏は、価値ある顧客経験のことを「経験価値(UX)」と説明し、価値の源泉がモノからコト(=体験)へとシフトしているとしました。
また、ギルモア/パインによる研究成果を引用し、コモディティ(代替可能な商品)→製品→サービス→経験の順に差別化は拡大し価格も上昇すると認めつつ、いずれのステージでもコモディティ化(市場価値の低下による一般化)が起こっていることを人間の欲求の高度化から示し、経験さえもコモディティ化すると予測し、経験の先の最終ステージに「変身(自身を変革してくれるもの)」があることを述べられました。
この「変身」は、ことばを変えればマズローの欲求5段階説の最終ステージの「自己実現欲求」にあたるでしょうか。自分が満足できる自分になりたいという欲求を、井登さんは「変身」の一言で表されました。
マズローが活躍した時代にはインターネットもスマホもありませんでしたので、この「変身」と言う解釈は、現代社会に暮らす人々に特有の思考なのかもしれません。
出典:「エクスペリエンスエコノミーにおけるサービスの種類、価格、競争力の関係(ギルモア/パイン)」
講演で学んだことや新たに気づいたことについて、受講者からたくさんのお声をいただきました。(下記アンケート結果より)
- 売りたいもの、というか自社の意義をみせる商品をつくるべきだと確信できた。
- 一人一人の顧客を見ることは重要だが、社会の変化を見て文化を造る、非常に奥の深い話でとても勉強になりました。
- 当たり前の様で、当たり前で無い、無意識の中で感じる事を言語化できる機会になりました。感謝!!
- モノからコトへ という意味がわかりました。
- 顧客ファーストで底なし沼におちいり、スタッフが疲れていて、何のために働くのかを考えるため、役に立ちました。
- 「よく、見る」ことでズレた観点をなおすことができる。合理性が全てではない。
- 目の前のわかりやすい(感じ取りやすい)顧客がもつ課題にばかり気を取られがちですが、顧客のニーズ以上、もっと価値のあるモノをとらえていかないといけないと感じました。
- 「ユーザー中心ではなく、その人を取りまく世界を見る」と言う部分は改めて意識していきたいと素晴らしい学びになりました。
- 価値は顧客の手元で完成すると言う内容が、そのとおりだと感じた。