ビジネスをデザインでひらく 公益財団法人大阪産業局・デザイン活用支援 oidc(Osaka Innovative Design Connect)
2025デザイン・オープン・カレッジ セミナー「ライセンスビジネスで広がる市場! 」開催報告
開催日: 2025年7月28日(月)
講師: 陸川 和男 氏(株式会社キャラクター・データバンク 代表取締役社長)
1. 講師紹介とセミナーの趣旨
本セミナーは、ライセンスビジネス、特にキャラクタービジネスの基礎から市場動向、実践的なノウハウまでを包括的に学ぶことを目的としています。講師の陸川和男氏は、広告・マーケティング業界での経験を経て、2000年に国内唯一のキャラクタービジネスに特化したマーケティング&コンサルティング会社「株式会社キャラクター・データバンク(CDB)」を設立しました。
また、世界最大のライセンス協会LIMAの日本支部設立に尽力し、現在は一般社団法人キャラクターブランド・ライセンス協会の専務理事も務めるなど、この分野における第一人者です。本セミナーは、同社が提供する90分×6回の基礎講座の内容を凝縮し、特にこれからライセンスビジネスを始めたいと考えている方々に向けて、その実情と市場の魅力を伝えることに重点が置かれました。
2. ライセンスビジネスの基本概念
ライセンスビジネスとは、「許諾する」ことを意味し、著作権、商標権、特許権などの知的財産権(IP)の保有者(ライセンサー)が、そのIPを第三者(ライセンシー)に使用許諾し、対価(ロイヤルティ)を得るビジネスです。
ライセンスの対象(プロパティ)
ライセンスの対象となる知的財産は多岐にわたり、主に以下のカテゴリに分類されます。
- キャラクター: アニメ、ゲーム、コミック、絵本などのキャラクター
- コーポレート&トレードマーク: 企業名やロゴ
- スポーツ: リーグやチームのロゴ
- ファッション: アパレルブランド
- アート: 著名な美術作品やアーティスト名
- 音楽: ミュージシャンの名前、肖像、アルバムジャケットなど
3. キャラクタービジネス市場の現状と価値
世界市場における日本の位置づけ
世界のライセンス市場は拡大傾向にあり、2023年の小売市場規模は約3,564億ドル(約50兆円超)に達しました。その中で「エンターテイメント/キャラクター」分野が全体の41.4%を占めています。日本は国別のライセンス市場で世界第3位の規模を誇り、特にキャラクター分野では世界第2位という非常に重要な位置を占めています。日本の国内ライセンス市場の約7割がキャラクタービジネスで構成されています。
キャラクターの定義と社会的価値
キャラクターは単なる「絵」ではなく、見る人に一定のイメージを与え、商品や企業への誘引効果を高める「人格を持ったIP」として定義されます。キャラクター・データバンクの調査によると、日本人の7割以上が何らかのキャラクター商品を所有しており、特に女性は年齢を重ねてもキャラクターを好む傾向が強いと解説されました。
キャラクターが広く愛される理由として、まず、「嫌われない存在」であることが挙げられます。キャラクターに何を求めているかというと、やはり人々の「日常の楽しみ」や「生きがい」となっているところがあると思われますし、キャラクターを推すことで「元気・活力」が得られるというのが多く、また、日常的なちょっとした「癒し」や「ストレス発散」のためのよりどころとなっていることも大きいと思います。
市場拡大の背景
近年の市場拡大は、以下の要因によってもたらされています。
- キダルト層(大人ファン)の拡大: フィギュア、ぬいぐるみ、プラモデル、カードゲームなど、大人をターゲットにした商品分野が好調です。
- 体験型消費の活発化: テーマパーク、展覧会、キャラクターカフェなど、キャラクターの世界観を体感できる機会が増えています。
- SNS派生型IP市場の顕在化: 「ちいかわ」に代表されるように、個人クリエイターが制作したファンシーなキャラクターがSNSを通じて影響力を拡大し、商品のパッケージコラボなどの展開が盛んです。
- 情報入手の多様化: YouTubeが子どもから大人までキャラクター情報の入手経路のトップであり、大人層はX(旧Twitter)やInstagramも活用しています。
4. ライセンスビジネスの実務と契約
ライセンスビジネスは、ライセンサー(権利者)とライセンシー(商品化・販売企業)の連携によって成立します。
ライセンスビジネスの流れ
- プロパティの選択: 自社のターゲットや商品コンセプトに合ったキャラクターを選定し、ライセンサーとのコンタクトを取ります。
- 契約交渉: 企画書などのチェックを経て許諾範囲(商品、期間、地域など)やロイヤルティ(権利使用料)、最低保証料(MG)などの条件を明確に定めます。
- 商品化: ライセンサーによるデザイン(サンプル)チェックを経て、製造、宣伝、発売を行います。
ロイヤルティ(権利使用料)
ロイヤルティは、売上高に対するパーセンテージ(例:上代の5〜10%)で計算されるのが一般的です。最低保証料(MG: Minimum Guarantee)は、契約時に先に支払う前払い金であり、売上が最低保証料を上回った場合にのみ追加でロイヤルティを支払う形となります。
5. キャラクタービジネスがもたらす可能性
キャラクタービジネスは、以下のような様々なメリットを企業にもたらします。
- 圧倒的な差別化: 世界で唯一無二の商品開発を可能にし、全国的な知名度獲得につながる可能性があります。
- 初期投資なく商品開発: 高額な設備投資を必要とせず、新しい商品開発や付加価値の創出が可能です。
- 新規顧客開拓: 独自のキャラクター商品によって、これまで接点のなかった新規の小売・卸顧客からの引き合いが増え、ライセンサーや関係者から新たな取引先を紹介してもらえる機会も生まれます。
- 売上の向上と粗利益率の改善: キャラクターの知名度を活用することで、商品の単価を上げることができ、売上と利益率の改善が期待できます。
受講者の声
セミナーで学んだことや新たに気づいたことについて、受講者からは、以下のような感想が寄せられました:(下記アンケート結果より)
- ライセンスビジネスの基本的な流れが理解できたし、キャラクターの持つ強みが、改めて言語化できて参考になった。
- 単にキャラを選定し、商品化するだけではダメで、自社の課題とキャラの理解とのマッチングが大切であることを学んだ。
- キャラクタービジネスの可能性を感じ、自社でもキャラクタービジネスに取り組んでみたいです。