ビジネスをデザインでひらく 公益財団法人大阪産業局・デザイン活用支援 oidc(Osaka Innovative Design Connect)
よくわかる!ブランディング vol.3
ブランディングツリーの幹のお話
前回は、ビジョンやパーパス、ミッションやバリュー、企業理念などの会社経営における根っこ、ブランディングツリーの土台について話を進めてきました。
今回は幹の部分です。
幹に対して端的に表現する言葉があるとすれば「勝ち筋」ですかねぇ。
成績優秀な学生Aさん、彼は京大か東大で博士になるだろう…という子がいたとします。
そして、成績はまぁまぁだけれど、音楽的なセンスがあるBさん。
お勉強は苦手、音楽や体育も苦手なCさんは、イベントを企画するのが得意。
はい、そういうことです。
その後、Bさんは最年少で4大ドームツアーを行い、オーディエンスを熱狂させるアーティストとなり、Cさんはイベント会社を経営し、テレビやSNSで人気となりました。
わたしは、どんな会社であっても「勝ち筋」があると思っています。もしくは、企業は「勝ち筋」を真剣に追い求めなければならない!と思っています。
その「勝ち筋」は「幹」となり、ビジョンやパーパス、経営理念といった「土台・根」と共鳴するものです。
私が大阪産業局の「デザイン・オープン・カレッジ」で行った「ビジョン・デザイン」をテーマにしたワークショップでは、参加者さんに企業の(競争)軸の作り方を集中的にワークしてもらいました。
前出の川本さんもここに強い印象があり、このブランディングツリーをイメージしたようです。
このワークショップでは、ライバル企業を意識し「2×2マトリックス」をどのように使っていくかを学ぶ、他では学ぶことができない内容となっていました。
ちょっとだけ、その内容の鍵となるエッセンスを紹介しますね。
縦と横に線を+状に引いて作る「ポジショニングマップ」ってありますよね?
そのマップ上にライバル企業や、意識する他社製品、そして自らを置いていくわけです。が、私は「これって、あんまり意味がないなぁ」と思っています。(こんな話ばかりですみません)
私のワークショップでは、縦、横の線の方をどんどん変えていくことを学び、どの軸なら勝てるのかを見つけていきます。
軸(勝ち筋)の発見により、ビジネスの景色が変わるところを、まじまじと実感してもらったんですね。
例えば「COOL-WARM」「SINPLE-COMPLEX」や「価格」や「性能」などのありがちな縦軸、横軸にライバル企業や製品を置いていくことで得られるのは、他社と同じ軸上での「頑張りましょう」だったり「勝ってるから安心」みたいなものしか無かったりするんです。
つまり、初めから軸が決められていて、その軸の中にライバル会社や他社製品がプロットされたマップなんて、見ていても、やる気を無くすか何をして良いか分からず、困惑して終わるということです。
ワークショップを行った皆さんから、こんな歓声が沸いていました。
「この商品って、ここが勝ち筋(幹)なんじゃない?」
「このお店って、他では味わえない世界観があって、ブランドとして推せるよね」
「他社はついてこれない、うちだけの勝ち筋が見えた!」
数あるライバル会社に対し、独自の価値、強みを作り出していく!そんな2×2のポジショニングマップの展開でした。
Aさんが勝てる軸(偏差値や模試の点数)だけを見ていたら、BさんもCさんも諦めるしかないじゃないですか?
私が提供する「軸づくり」は「うちの会社には、他の会社では勝てないぞ!」という明日への希望が描き出されるもので、作ったら終わり、机の奥にしまっておくようなモノではありません。その勝ち筋である幹は「枝葉(戦略)」を支えるものなんですから!
はい、幹を持つことが(皆さんの)ブランディングには必要です!

幹と枝
「はい、土台と幹は分かりました。枝葉は事業戦略、プロモーション戦略、商品戦略とか書いていますが、戦略が幹から出てくるんですか?」
「ええ、そうです」
「でも、なんか順番が違う気がするけど」
ここまで「土台(理念)」→「幹(勝ち筋)」という話を読み進めて頂きました。
改めて、ありがとうございます。
どうですか? 勝ち筋が見えている状況と、いない状況。
この2つは各戦略で異なったものになると思いますか?
これ、全く違うものになってしまうんです!
実は枝葉が幹に繋がっているか、いないかでブランディングが成功するか否かがはっきりと分かれてしまいます。

二刀流と戦略
大谷選手の場合の勝ち筋って何でしょう?あの体格、パワーもそうですが、大谷選手を大谷選手たらしめる勝ち筋…?
そうですね「二刀流」です。
唯一無二、彼でなければならない理由であり、有名な大リーガー達に「どんだけ凄い選手なの!?」と言わしめるわけです。
すごいピッチャーもいる、すごいバッターもいる。
しかし、彼の「2×2マップ」には、バッティングとピッチングの軸があり、この両方を満たすポジションには、一誰一人存在しないんです。
その幹が、彼のすべての戦略の中心になっている。
「いくらお金を積んでもいいから、大谷選手が欲しい」「二刀流は大リーグを熱狂させる」
大谷選手は二刀流を続けられるエンゼルスと契約を結びました。二刀流を認めない球団に入ることは、その唯一無二の個性を捨てることになります。
二刀流に対する批判もありました。認めないという球団もありました。
エンジェルスでは、スケジュールやメンタルの調整も二刀流で結果を出す為に、厳しい管理が要求されました。
今、球界で彼の二刀流を期待しない人なんて一人もいないのではないでしょうか?
二刀流無くして、今の大谷選手があったでしょうか?
他社の評価軸上に、御社をポジショニングするような愚かなことを、とにかくやめてほしいなと思います。
ブランディングには、優位性のある他との「違い」が必要で、そこを軸にして全ての戦略を立てていくことが、とーっても重要ってことですね。
土台と軸、そして枝葉とその関連性に納得してもらえたのでは?と思います。

全体で考えることが重要です
ひんやりとクールなイメージのツリーをイメージし「飾り、作りたい」と考えているのであれば、土台の色、幹の色、枝葉の色は白で統一するかもしれませんね。
枝葉だけはシルバー?やっぱり薄い水色?なんて考えるのもアリかもしれません。
土台と幹は、その事業に対する「信念、理念」を基にした「勝ち筋」を構成します。
そして、土台と幹の関係性を「ストーリー」として見せていくことになります。
その「ストーリー」から枝葉、各戦略がおのずと生まれてきます。
事業戦略、マーケティング戦略、プロモーション戦略といったものですね?
ここで、一旦、立ち返って欲しい重要なポイントがあるんです。
それは「顧客」です。
「ああ、やっぱり」と思われた方、そうなんです。
商売ですから、商品やサービスが売れることをめざすわけで、それぞれの戦略が何をめざすかと言うと「お客さん」ですよね?
「枝葉(戦略)」を考える上で重要なことは「幹(勝ち筋)」と「顧客」を繋いでいくという見方です。
「どう繋いでいこうかな?」と考えることからそれぞれの戦略が見えてきます。
そう、マーケティング戦略も然りです。
マーケティングは御社の中で常に動いているものですが、その中心にいる顧客を見れていますか?
御社の「幹(勝ち筋)」をどんな人に、どんな言葉で、どんなやり方で伝え、繋いでいきますか?
企業がなすべきこと、機能は「マーケティング」と「イノベーション」です!
そう、ピーター・ドラッカーさんですね?思い出して頂いて嬉しいです。
「マーケティング戦略」は、顧客創造への具体的なアプローチを設計し、アクションすることです。
【オーナメントを美しく飾ろう!/商品、サービス、ソリューション etc.】
「商品って一番最後なの?」
「いいアイデア考えた!で売っていけたらええやん?」
はい、ブランディングを考えていく上では、商品やサービスが先にありきではないんですね。
極端に言えば「これは我が社が扱うべき商品、サービスなのか?」といった視点がいるんです。
「うわぁ、めんど!」と思われましたか?
このブランディングツリーが、通常のモデルと一線を画して優秀な理由がそこにあるんです。
枝葉の根元には幹がある。
幹の下には土台があり、その関係を常に意識していくことができるわけです。
その全体像を俯瞰し、バランス良く調和しているかを考えて「飾る」のが、御社に利益をもたらす「商品・サービス・ソリューション」です。
「手放しに売れる、唯一無二な商品、サービス」って素晴らしいですよね。
優れたイノベーションの発生は、ビジネスに於けるワイルドカード、全てに勝る最強の切り札です。
これに対して「顧客創造」のために行うのがマーケティング、ブランディングです。
ブランドの価値が陳腐化するのは、その信頼を無くした時です。
例えば、ソニーの商品は「ソニーがソニーであるために」あります。
その感覚を磨けるか、社員全員で共有できるかが、最も大切なブランドマインド形成の鍵です。
ソニーはイノベーティブな会社だと言われますが、日本が世界に誇れるブランドでもあります。
彼らは顧客との関係(期待や信頼)をとても大切にする企業なんですね。
「生命保険もやってるやん?」
そうなんです。
本業を離れた領域で、素晴らしいアイデアが生まれ、ビジネスしたい場合は「別会社を創る」「別のブランドを興す」という手段が必要になります。

土台、幹、枝葉、オーナメント
あなたが何者かを明示し(土台)
優位性を見出し軸とする(幹)
その軸と顧客をつなぎ、ビジネスの筋道を立て(枝葉)
具体的な商品、サービスを提供する(オーナメント)
全ては一体であり、あなたらしい美しさを構成します。

気になる星の存在
「インテグリティ」という星の存在をきちんと掲げたブランディングツリーの方向性。
ここが「肝」です!
「企業の成功、利益、目標が星という考えですか?」と川本さんに尋ねられて、私は「いいえ」と即答しました。
「では、何なの?」と川本さん。
「はい、一言で言うなら【真摯さ】です」
「インテグリティですか?」
「いい響きですね、そうです」と私は答えました。
この星は、商品しかり、理念しかり、戦略しかり、このツリー全体、企業を「照らす」ものです。
「わかりにくい!何?照らすって??」
最近は、一部の傲慢な社員の不祥事が会社全体を揺るがせるケースも多く報道されていますね。
その原因をつきつめると、真摯さの無い、自己中心的な考えや行動が原因です。
長い月日をかけて積み上げた信頼を一瞬で崩してしまう、その自己中心的な考えは常に「人」から出てくるものですよね。
この星は「インテグリティの星」と名付けました。
ブランディングを行うならば、全ての事がこの星の影響下になければならないと定めました。
子供の頃にお父さんに言われた「神さんが見とるよ」ということです(笑)
土台作りに真摯さが要る。
幹を立てるのに真摯さが要る。
枝葉を考えるのに真摯さが要る。
商品やサービスに真摯さが要る。
経営者に真摯さが要る。
社員には真摯さが要る。
「インテグリティ」という言葉は、私の話に頻出するピーター・ドラッカーさんに影響されて、引用しています。
彼はこの真摯さ、インテグリティについて厳しい言葉を残しています。
「インテグリティの欠如した者は、人間という最も重要な資源を破壊し、組織の精神を損ない、業績を低下させる」「真摯さの無い人間を組織に入れてはいけない」ということで、真摯さ、インテグリティは常に人の中にあるものでかつ、インテグリティの無い人間によって、事業活動もブランドも危険にさらされてしまうということです。
おわりに
さぁ、どうだったでしょうか?
今回は、ブランディングをどう捉えたらよいかを「ブランディングツリー」を通じてわかりやすく説明できたら!とブログ形式で進めてきました!
いかがだったでしょうか?
長々とお付き合い頂き、ありがとうございました。
・顧客の解像度を上げ、もっと顧客を知り、アプローチする方法
・顧客ニーズ、嗜好を調査分析するリサーチ手法・データ解析(多変量解析等)手法
・顧客ファネルの構築
・カスタマージャーニーマップ
などなど、知識だけでも入れておくと良いと思えるマーケティング手法を学ぶ場も設けていけたらなと思っています。
個別の無料相談(1回につき1時間~1.5時間程度)もお受けしていますし、2025年11月には「ブランディングツリー・ワークショップ(仮)」も開催する予定です。
ご興味があれば、是非お声かけください。
よくわかる!ブランディング