ビジネスをデザインでひらく 公益財団法人大阪産業局・デザイン活用支援 oidc(Osaka Innovative Design Connect)
よくわかる!ブランディング vol.2
ブランディングツリーとは?
こんにちは!小山です。
前回のブログ、どうでしたか?
前回は、「もしドラ」のピーター・ドラッカーさんを紐解き、お客さんが向こうからやってきてくれるようにするために、活動することがマーケティングだ!という話をしました。
ドラッカーさんの言うところの企業の機能は「マーケティング」と「イノベーション」の二つだということ…でした。
ここまでは、良いですよね?
「どこぞのセミナーでは違うことを言っていたぞ?」
というご意見もあるかとは思いますが、私は、ドラッカー先生を信奉し、基本に置いているので、そこはご理解頂きたいです。
そこで、皆さんのブランディングの実践のため「ブランディング・ツリー」という思考モデルをちらっとお話しました。
つまりは、これの図はクリスマスツリーですね。
このモデルのヒントを与えてくれたのは、同僚の「川本氏」です。
私のセミナーを聞いて、クリスマスツリーをイメージしたそうです。
その「イメージ力」に驚きました!
彼は、直感的にクリスマスツリーをイメージしたようです。
話しを聞いていると、彼の考えていたことと、私が感心したポイントとは違いがあったようでが、そこはさておき、企業におけるブランディングにおいて起こる「理解 → 実践」のジレンマを抱えていた私には「晴天の霹靂」でした。
「○○ツリーとかって、いろいろなジャンルの参考書にもよくあるし、新しくはないのでは?」
と言われそうですが、秀逸なのは「クリスマスツリー」だという点なんです。
通常、三角形などの幾何学図を使って、何かの上に何かがあって…というように視覚的な理解を促すものが多いんですし、今まで見てきた「○○ツリー」も、構造を説明するものでした。
ブランディングで重要なことが抜け落ちている「設計図」…。そんな違和感ですね。
その「図形」を考案された方を否定してはいませんし、私も利用してきましたから、間違っているとは全く思っていません。
ただ、そこに足りないものは各パーツをつなぎ合わせ、一体として見る為の「ノンバーバル(非言語)な何か」です。
それは、ブランディングに必要な要素が互いに影響しあい、美しくバランスさせようとする「知的な感性」や「ストーリー」だったりします。
ん~、知的な感性?? やっぱり言葉にすると伝わらないですよね。

クリスマスツリーを飾った思い出にブランディングの鍵があるなんて
ブランディングツリーの秀逸なところは、12月、ツリーを用意してオーナメントを飾る時に感じる、慎重にバランスを考え、必要なもの、不必要なものを選定し、創り上げていくワクワクした感覚を、あなたに思い起こさせるところです。
ディケンズの「クリスマスキャロル」のような善意の物語、サンタクロースのそりが夜空を滑る姿を待ち望む、希望と清らかさに満ちた幸福感がクリスマスにはあったりしますね。
企業がその企業としてあるために何が必要で、何を作り、見せていくか、世の中に対する約束を決めていくか?を「真剣に考え、楽しむ」そのスタンスが企業をブランド化させていくんです。
例えば、真っ白なツリーにブルーとシルバーのオーナメントだけを飾って清涼感とクールさのあるゴージャスなクリスマスツリーを創りたいと考えた時、そこには可愛いサンタさんの人形もキャンディも飾れません。
オーナメントも整然と均整を保った配置が必要です。
それは、氷の世界のような清涼感、クールさを醸し出すために効果的だからですね?
「これはうちの会社の表現としてありかな?」
「うちの店のユニフォーム、お客さんにどんな印象を与えているのかな?」
「うちの企業理念が “寄り添い続ける” なのに、わかりにくい言い方してない?」
「デザイナーさんから、ポスターの色は『青が良い』と進められたけど、うちのイメージかな?」
皆さんには、このワクワクしながらオーナメントを選び、また、ふさわしくないものを棄てて「ここにはこだわらないとな」と試行錯誤している姿を思い描いて欲しいんです。
まずは、何をするにも「御社らしさを考えている姿」がイメージできればOKです。

ブランディングツリー・土台編
皆さんが「ブランディング」を進めていくために、より分かりやすくする為のツール、ブランディングツリーがどのようにできているのかを、順を追って説明したいと思います。
まず、スタートするには土台が必要です。そりゃそうですよね?
土台は、ミッション、ビジョン、バリューと言ったり、パーパス、経営理念といった建て付けで表されたりしています。まさに、企業の根っこにあたります。

ビジョンは、遠くに置かれた旗ではない
あなたの会社にも「MVV」や「経営理念」などはありますか?
よく「ビジョンとは、〇〇年後の未来のあるべき姿」と解説され、創られている企業さんも多いですね。
それもアリなんですが、実は「将来あるべき姿」は、直接的、実践的な機能を持っていません。
「え?そんなこと言っても、買った本に【ある時点の将来のあるべき姿】って書いてあるし…」と声があがりそうですが、少し考えてみて欲しいところです。
「10年後、あるべき姿」と「今、こうする」は直結しないですよね?
「10年後、あるべき姿」がこう だから 「今、こうする」というロジックは、10年後のスリムなボディの為には今、このサプリを飲みなさい的な「やらなければならない理由」つまりは脅迫を伴っていませんか?
また「パーパス」と聞くと「目的という意味でしょ?」となってしまいますよね?
「パーパス」は「目的」ではなくて「意義」と訳されるのが適切です。二つの言葉は同義なのに「目的」には先のことというニュアンスがつきまといます。
日頃よく使う「目的地」という言葉があって、自動的に「場所」「時」という物理的なニュアンスを含んでしまうんですね。
「VISION」の話に戻ると、私は、語源である「見る」の意味にウェイトを置く方が良いと思っています。
突っ込んで言うと「今、あなたが、あなたの目を通して見ている」ということになると思います。
「あなたの目」です。
同じものを見ても、だれが見るかによって、世界が変わることに注目しています。
大谷選手にとって球場のゴミは「気づいたら、拾って片づけたらいいもの」ですが、多くの選手にとっては「自ら片づけるなんて、あり得ないもの」です。ビジョン(見ている世界)が違うんですよね。
大谷選手は10年後の球場のことなんて、考えていないでしょう?
球場のあるべき姿はゴミがない状態なんていちいち考えないと思います。
見た瞬間に発動するアクション、それは理屈ではなく「大谷選手が大谷選手である」ということで「彼の目に映る世界」では普通なことなんだと思います。
そうなんです。
経営者さんには「今」に集中し、社員さんや関係者さんが「今」動き「今」を大事に動けるように「今、見えている世界を整えていく理念(ビジョン)作り」をおすすめしています。
私は、ブランディングツリーの根っこ、土台を置く場合、特に重要視しているのが「私は○○です」と、自らを宣言し定めることだと考えています。

中長期戦略とブランディング
インナーブランディングは、今、そして日々、常に効果を発揮するものでなくてはなりません。5年後、10年後の姿を描くことは、中長期計画で練り込んでいくことだと私は考えています。
大谷選手が幼少期に描いた「8球団ドラフト1位」に向けての曼荼羅というのがあります。これは目標を設定して、達成するための課題が小さな目標へと分解されていく素晴らしいものですが、これは、企業活動における「中長期の事業計画」です。
「中長期の事業計画」は、事業を行う上で経営者の責任として作り上げるもので、会社のブランディングに対する取り組みではないんです。だって、今の大谷選手が未だに「8球団ドラ1」って言っていたらおかしいでしょう?
事業の「目標」は短期も含め中期、長期でもつ必要があり、それは規模拡大を求める(あるいは、求めない)ための明快な数値や達成目標でなければならないんです。
「こうなっているべき」という曖昧で、焦燥感をあおるようなものでは無いですよね?
だって、計画なんですから!
大谷選手がどう思っているかはわかりませんが、野球に、そして全ての人々に真摯であり続け、外からの雑音に流されない信念。それは、大谷選手が「8球団ドラフト1位」を極めたいという目標以前にあって、常に彼を輝かせ続けるものです。
彼のビジョンは幼い頃から揺るぎなく、存在し続けているからこそ、今の彼を大谷翔平たらしめている…。
どう思われますか?

サントリーは、水と生きる会社
ブランディングで成功している企業としてサントリーさんがあります。
最近、サントリーさんの広告を見ましたか?
「水と生きる」という一文が企業ロゴに添えられています。
私たちは飲料を作る会社ではなく、水と生きる会社ですと宣言しているようですね?
これこそがサントリ―さんの「根」であり「土台」を象徴するものです。
そして、この素晴らしいサントリーさんのタグラインが生まれるにあたって「サントリーとは何なのか?」「私たちの存在意義とは?」という自問があり、制作会社さんと膝を突き合わせて生まれたものだと思います。
長い時間をかけて、この問いに向き合っていったんだろうと、容易に分かります。
その時間は、とても楽しく充実したものだったんじゃないかな?と思うんですよ。
創業者、鳥井信治郎さんの言葉「やってみなはれ」が理念に組み込まれることで、社員さんたちの見ている世界がどう変わっていくのか?また、素晴らしいのはサントリーの事業に関わる人達は、自らを「サントリアン」と呼んで、その理念、精神を共有しています。
「何事にも挑戦することができる」という目で全てを見るビジョンが躍動している...それは、想像に難くないと思います。

目標設定という凶器
ビジョンやパーパスは、その職場、環境に身を置くことの充実感を約束し、背中を押す「希望」となるものでなければなりません。
目標やこうあるべき…のように遠くにあって、到達するための努力を強いるものでは無いのです。
時に高い「目標」は、人をダメにしてしまう恐ろしい凶器になりえるんです。
ある会社の従業員さんは、目標というプレッシャーに耐え切れずに会社を去り、ある管理職さんは自責し命を絶ちました。
「(こう)あるべき」そう聞くたびに何か恐ろしさを感じる私がいます。
時に、低い「目標」は怠惰な人間性や諦念を育んでしまいます。
ある事務員さんは、一日の目標を午前中に済ませてしまいます。自らへの期待が薄いと感じ、会社を辞めようと考えていました。ところが、その会社で、役職や部門を超えて参加できる会議を設けたところ、彼女は会議ごとに自発的に調査した市場動向や提案資料を作り、アイデアをプレゼンしたそうです。そのイキイキとした姿は会社を変える原動力になったそうです。
経営陣の驚いた顔が目に浮かびませんか?
御社が御社らしくあり、常に希望に満ちている状態を思い描いてください。
ブランディングツリーの土台、根は、全ての活動を輝かせる源泉であり「信念」と「エール」を葉脈の先の先へと送り続ける原動力です。
「未来のことなど、誰にも分からない」それは、経営者のお腹の中に満ちている「覚悟」でもありますよね?
先が分からないからこそ、今を精一杯、前向きに考え、動くことが大事だと思いませんか?
話が乗ってきたところですが、今回はここまでです。
是非、是非、次回もお楽しみください!
よくわかる!ブランディング